Q:NHK『あさイチ』でも取り上げられた“年収の壁”以外にも、色んな壁があるってホントですか?
今年(2024年)2月にNHKの情報番組『あさイチ』でも取り上げられた年収の壁。番組では、年収の壁以外にも様々な“壁”が存在すると紹介されていました。しゅふの周りには、他にどんな壁があるのでしょうか。
そこで、働きたい主婦・主夫層のホンネを調査する「しゅふJOB総研」研究顧問で『あさイチ』にも出演されていた、ワークスタイル研究家の川上敬太郎さんに話を伺いました。
――川上さんは、以前にも『あさイチ』に出演されているんですよね?
川上さん:年収の壁がテーマになった今回で5年ぶり3回目の出演になります。スタジオでご紹介いただいた際にそうあいさつしたら、目の前に座られていた博多大吉さんが「甲子園みたいですね」と拾ってくださいました(笑)。
――ツッコミを担当されているだけに、流石ですね!(笑)。番組ではスタジオから活発に質問が出て、メールやFAXもたくさん寄せられたようですが、出演されてどんな感想を持たれましたか?
川上さん:やはり、年収の壁は主婦・主夫層の方々にとって気になるテーマだったようで関心の高さを感じました。そんな関心の高いテーマに対し、番組MCの華丸大吉さんや鈴木アナをはじめ、スタジオの方々が鋭い指摘や質問をされていたので、視聴者の方々の理解もより深まったのではないでしょうか。
――番組の中で川上さんは、もっと働きたいと考える人が自分らしく働く上で壁になっているものを3つ挙げられていました。それぞれの壁について、改めて教えていただけますか?
川上さん:1つは、「時間制約の壁」です。番組では“ラスボス”と表現しましたが、年収の壁を取り除いたとしても家事や育児、介護など家周りの仕事があるとどうしても時間の制約を受けてしまいます。それら時間の制約が妻にばかり偏ってしまわないよう、ご夫婦で話し合うことが大切です。
次に、「時給相場の壁」。ともすると、「自分はパートだから時給が低くて当然」と考えてしまいがちですが、ご自身のキャリアを再評価してみていただき、時短であってもより高単価の仕事につける可能性を探っていただきたいと思います。しゅふJOB総研の調査では、6割以上の人が時給1500円以上なら扶養枠を外すと回答しています。
最後3点目に挙げたのは、「キャリアブランクの壁」です。職業上のキャリアだけに着目すると、確かにブランク(空白)は生じるかもしれません。しかし、キャリアとは本来、人生そのものの歩みを意味します。人生にはブランクなどありません。子育てと言いながらも、実は親の方が育てられていたりもします。ブランクといわれる期間も必ず何らかの成長機会になっている点に着目し、ぜひご自身がこれまで頑張ってきたことを改めて認めてあげていただきたいと思います。
――ネットでも、「人生にブランクなんてない」という言葉が響いたという声が見られましたね。年収の壁以外にもいくつも壁があるというのは、確かにその通りだと思います。だとしても、それぞれに対応策があるということですね?
川上さん:その通りです。番組では年収の壁以外に3つの壁を紹介しましたが、主婦・主夫層の周りには他にも色んな壁が立ちはだかっています。例えば、「制度理解の壁」。年収の壁も、103万にいわゆる106万(月額88,000円)、130万などとややこしく分かれていてわかりにくい。他にも、有給休暇が何日付与されるかとか、どういう時に割増賃金が発生するかとか、ルールってわかるようでわかりづらいですよね。そのように、制度自体を理解するのが大変、という壁があります。
また、勤務時間や日数、職務内容など希望を満たす仕事が少ないという「仕事条件の壁」、仕事を見つけた後も家庭の事情で早退したり休んだりしなければならない「両立の壁」など、周囲には壁だらけです。
でも、壁の存在を認識できれば乗り越えるべき相手の姿が明確になります。
壁の姿が見えないと、「なんとなく働きづらい・・・」と悶々としてしまいますが、姿さえ見えればどうやって乗り越えれば良いかをオールビジネスリンクさんをはじめ、行政機関やご家族などにも相談しやすくなるはずです。
まずはご自身の周りにどんな壁がそびえているのかを確認した上で、どの壁が分厚くて高いのかを見定めていただきたいと思います。
プロフィール
川上 敬太郎
ワークスタイル研究家。男女の双子を含む、2男2女4児の父で兼業主夫。1973年三重県津市出身。愛知大学文学部卒業後、大手人材サービス企業の事業責任者を経て転職。業界専門誌『月刊人材ビジネス』営業推進部部長 兼 編集委員、広報・マーケティング・経営企画・人事部門等の役員・管理職、調査機関『しゅふJOB総合研究所』所長、厚生労働省委託事業検討会委員等を務める。雇用労働分野に20年以上携わり、仕事と家庭の両立を希望する主婦・主夫層を中心にのべ約5万人の声を調査・分析したレポートは300本を超える。NHK「あさイチ」、テレビ朝日「ビートたけしのTVタックル」等メディアへの出演、寄稿、コメント多数。現在は、『人材サービスの公益的発展を考える会』主宰、『ヒトラボ』編集長、しゅふJOB総研 研究顧問、すばる審査評価機構株式会社 非常勤監査役の他、執筆、講演、広報ブランディングアドバイザリー等の活動に従事。日本労務学会員。