Q:無期雇用派遣ってどんなメリットがあるの? しゅふでも働けるの?

派遣といえば、3か月更新などの有期雇用というイメージが一般的です。しかし、中には無期雇用の派遣もあり、その数は年々増えているのだとか。

そこで、働きたい主婦・主夫層のホンネを調査する「しゅふJOB総研」研究顧問でワークスタイル研究家の川上敬太郎さんに、無期雇用派遣が増えている理由やそのメリット、しゅふ層でも無期雇用派遣で働くことはできるのか、などの疑問について尋ねてみました。

――人材派遣で働く場合、期間限定だったり有期契約を繰り返し更新する印象があります。しかし近年、無期雇用派遣が広がってきているというのは本当ですか?

川上さん:着実に増えてきているようですね。厚生労働省が公表している労働者派遣事業報告書の集計結果(速報)によると、令和3年度の無期雇用派遣労働者数は77万5,804人。前年度比で8.8%の増加です。その前年度の令和2年度も、令和元年度より18.0%増加していました。着々と増加してきていることが伺えます。

――なぜ、無期雇用派遣で働く人が増えているのでしょうか?

川上さん:働き手の希望が多様化する中で無期雇用派遣を選ぶ人が増えた可能性もありますが、目に見える形で影響をおよぼしているのは2つの法改正です。1つは平成27年の労働者派遣法改正で、同じ事業所の同じ課などに継続して3年派遣される見込みとなった場合、雇用安定措置が義務づけられました。その措置の1つとして、派遣元による無期雇用があります。

もう1つは平成25年の労働契約法改正で、有期雇用契約が5年を超えて更新された場合、労働者からの申込みによって無期契約に転換されることが定められました。いわゆる無期転換ルールです。

――なるほど、法改正で有期雇用から無期雇用への切り替えが促進されたんですね。無期雇用になれば長期安定的に働けるというメリットがありそうです。

川上さん:そうですね。他にも、無期雇用派遣なら同じ職場で同じ職務に3年を超えても就くことができますし、いまの職場でいまの職務を極めたい人にとっては希望をかなえやすくなります。また、派遣先企業としても、その仕事に慣れた派遣社員に長期に渡って活躍してもらえるというメリットがありますね。

――そう考えると、無期雇用派遣は派遣社員にとっても派遣先企業にとってもメリットが大きいと言えますか?

川上さん:派遣社員と派遣先企業双方の希望が合致している場合は、メリットは大きいと思います。一方で、いずれかの希望が変わることもありますね。そうすると、派遣社員の希望に沿えず別の派遣先企業に職場が移ったり、派遣先企業の希望に沿えず派遣社員が入れ替わるということも起こりえます。

また、有期雇用から無期雇用に切り替わった場合、派遣社員の給与金額や支払い方法など雇用期間以外にも変更点がある可能性もあります。一方、派遣先側でも派遣料金などの変更がある可能性もあるので、無期雇用に切り替える際には有期雇用の時と変更点がないか契約内容をよく確認してから承諾するようにしてください。

――しゅふ層も無期雇用派遣で働くことはできますか?

川上さん:しゅふ層の雇用形態として最も多いのはパートタイマーで、その多くは6か月更新などの有期雇用ですが、法律で定められた条件を満たせば無期雇用に切り替えることができます。

同じく派遣社員の場合も、有期雇用から無期雇用へと切り替えられます。無期雇用派遣であれば一般的なパートタイマーより高時給かつ長期安定的に働けるというメリットが期待できますね。

――無期雇用派遣を希望するしゅふは多いのでしょうか?

派遣に絞った調査ではありませんが、私が研究顧問を務めるしゅふJOB総研にて正社員以外で働く場合に希望する雇用期間について、主婦・主夫層に尋ねたことがあります。すると、無期雇用を希望する人が過半数でした。ただ、無期雇用派遣でも派遣先が変われば勤務場所や勤務時間、日数なども変更になる可能性がある点には注意が必要です。

また、約1/4は有期雇用を希望しました。更新の際に条件交渉がしやすかったり、退職の申し出がしやすいことなどが理由です。無期雇用派遣と有期雇用派遣には、それぞれメリットとデメリットがあります。働き方を選ぶ際には、派遣元と相談しながらぜひ最適な選択をなさっていただきたいと思います。

川上 敬太郎

ワークスタイル研究家。男女の双子を含む、2男2女4児の父で兼業主夫。1973年三重県津市出身。愛知大学文学部卒業後、大手人材サービス企業の事業責任者を経て転職。業界専門誌『月刊人材ビジネス』営業推進部部長 兼 編集委員、広報・マーケティング・経営企画・人事部門等の役員・管理職、調査機関『しゅふJOB総合研究所』所長、厚生労働省委託事業検討会委員等を務める。雇用労働分野に20年以上携わり、仕事と家庭の両立を希望する主婦・主夫層を中心にのべ約5万人の声を調査・分析したレポートは300本を超える。NHK「あさイチ」、テレビ朝日「ビートたけしのTVタックル」等メディアへの出演、寄稿、コメント多数。現在は、『人材サービスの公益的発展を考える会』主宰、『ヒトラボ』編集長、しゅふJOB総研 研究顧問、すばる審査評価機構株式会社 非常勤監査役の他、執筆、講演、広報ブランディングアドバイザリー等の活動に従事。日本労務学会員。