Q:早退、急な休みなど、頻繁に時間調整の相談があるのは無責任に感じてしまう・・・

「明日お休みをいただけないでしょうか」とか「急なのですが、子どもが熱を出したので早退させていただけませんか」など、頻繁に時間調整の相談を受けるとやる気がなさそうに見えたり、無責任に感じてしまう―――。

主婦層は大切な戦力だと認める企業の方からも、そんな悩みの声を聞くことがあります。そこで、ワークスタイル研究家で、働きたい主婦・主夫層のホンネを調査する「しゅふJOB総研」研究顧問を務める川上敬太郎さんに話を伺いました。

――主婦層の社員から、頻繁に時間調整の相談を受けるとやる気がなさそうに見えたり、無責任に感じてしまうという声についてどう思いますか?

川上さん:やる気がなさそうだったり無責任に見えているだけなのと、本当にやる気がなかったり無責任なのとでは大きく異なります。後者なのであれば、主婦層であるか否かに関わらず、仕事に対するスタンスとして望ましくありません。

しかしながら、前者であれば事実を見誤っていることになります。実際はやる気も責任感も備えているのに、「やる気がなさそう」とか「無責任なのでは」などと色眼鏡で見てしまっているとしたら、職場側にも働き手側にも損なように感じてしまいます。

――とはいえ、早退したいとか、急に休みたいと言われるようなことが繰り返し起きると、出勤している他の社員とどうしても比較してしまうと思うのですが。

確かに、他の社員は出勤しているのに休むのか、という風に見てしまうことはありそうです。また、早退したり急に休むことで、他の社員にしわ寄せがいくこともありえます。

ただ、それは主婦層でなくても起こりえることです。誰でも体調を崩すことはありえますし、有休をとったり、性別を問わず育休に入ることもあります。ワークライフバランスを重視する傾向が強まる中、休む社員がいてもカバーしやすいような業務体制を構築する必要性が高まってきています。

そして、何より大切なのは、早退したり休みをとった社員が担当職務をしっかりと果たせているかどうかだと思います。早退します、休みます、仕事はやり切れません、と言われればやる気がないとか無責任と思われても仕方ないでしょう。しかし、早退します、休みます、でも仕事は期日までに仕上げられるように調整しています、ということであれば問題ないのではないでしょうか。

仕事は、いつまでに何をどのレベルで仕上げるかが明確になっていれば、時間の調整がしやすくなります。早退や急な休みがあるからと、「やる気がなさそう」とか「無責任」と決めつけてしまうのではなく、求める仕事の成果が期日までにきちんと出せているかどうかで判断する方が、職場と働き手双方にとってメリットがあるように思います。

――確かに、早退したり休んだりしても、仕事さえきちんと出来ていれば問題はないはずですよね。ただ、そもそも家庭の制約がある主婦層に、そこまで成果を求めて良いものなのでしょうか。

私が研究顧問を務めるしゅふJOB総研で、主婦層の方々に「上司は育児等、家庭の制約がある主婦層の社員に対しても仕事の成果を求めるべきだと思いますか?」と尋ねたところ、「大いに思う」「少し思う」合わせて85.2%の人が思うと回答しました。

主婦層は家庭の制約があるからこそ、却って時間にはシビアだったりもします。帰宅する時間から逆算してキッチリと仕事を終わらせ、夕飯の買い物やお子さんのお迎えなどのため、仕事終わりにダッシュするようなこともあります。だからこそ、いつまでに何をどのレベルで仕上げるかを頭に入れて、仕事で求められている成果に向き合う意識がむしろ高い面があるのです。

早退や急な休みがあるかどうかに意識が奪われてしまい、そんな主婦層が秘めた“プロ意識”に目を向けないとしたら、とてももったいないことなのではないでしょうか。 また、主婦層の方々も早退や休みなどを申し出る際、期日に間に合うかどうかやサポートを依頼していることなど、仕事で求められている成果に目途がつけられていることも合わせて伝えられると良いと思います。

川上 敬太郎

ワークスタイル研究家。男女の双子を含む、2男2女4児の父で兼業主夫。1973年三重県津市出身。愛知大学文学部卒業後、大手人材サービス企業の事業責任者を経て転職。業界専門誌『月刊人材ビジネス』営業推進部部長 兼 編集委員、広報・マーケティング・経営企画・人事部門等の役員・管理職、調査機関『しゅふJOB総合研究所』所長、厚生労働省委託事業検討会委員等を務める。雇用労働分野に20年以上携わり、仕事と家庭の両立を希望する主婦・主夫層を中心にのべ約5万人の声を調査・分析したレポートは300本を超える。NHK「あさイチ」、テレビ朝日「ビートたけしのTVタックル」等メディアへの出演、寄稿、コメント多数。現在は、『人材サービスの公益的発展を考える会』主宰、『ヒトラボ』編集長、しゅふJOB総研 研究顧問、すばる審査評価機構株式会社 非常勤監査役の他、執筆、講演、広報ブランディングアドバイザリー等の活動に従事。日本労務学会員。